【第5話 勘違いと肉体の秘密】



修行上でネジに挑まれた日の翌朝、オレいつもより少しだけ寝坊した。
数ヶ月ぶりの他人との会話で少し舞い上がっていて、寝酒を飲みすぎてしまったのだ。

他人と出会うのはせいぜい食糧を買うときくらいだし、買い物で特に会話するわけでもないからな。
俺が無口になったのはこの世界に来てからだ。以前の自分は一人暮らしだったが、会社でも飲み会でも会話があったし、それなりに中の良い友人もいた。

歯も声帯もできてなかった頃から現在まで流石に10年間近くまともな人間関係がないと、その環境に順応してしまうもんなんだな。

今では会話する方にこそストレスを感じてしまう。

そのための深酒のせいでいつもより起きるのが1時間遅れてしまった。
まぁ流石に二日酔いを起こすほどではなかったが。

ただそれだけなのにもう体の中が熱くなっている。
体の中のエネルギーが発散されたがっているのだ。

そんな我儘な肉体に溜息がでてしまう。
ココに来て以来どんどん磨耗していく俺の心には、身体能力もチャクラも常識外のレベルに達してしまった自分の体を誇る気持ちも無くなっていた。



なぜこんな体になったのか説明しようと思う。

オレの肉体の肉体の異常について言うなら・・・始まりは幼児期だ。
赤ん坊になって気づいたのは、いくら食事をしてもなかなか消えない空腹感だった。

秋道一族は生まれながらに多くの栄養を補給し脂肪を蓄えようとする。
これは常に空腹状態にし、食事をさせる。肉体にまで刷り込まれた秋道一族の特異体質だったのだ。

そして幼児期感じていた肉と骨の間の熱の正体はチャクラではなく、秋道一族の体質によって脂肪細胞に蓄積されようとしてたエネルギーだったのだ。
オレはこれをチャクラだと勘違いし、食事をしては熱を消すために壁登りの修行ととかで消費していた。

だから幼児期のオレが壁登りの修行で使用していたチャクラは、少量の精神エネルギー+大量の身体エネルギーという構成になっていた。



幼児期のオレはこの熱を使い切って疲れて眠るまでチャクラとして使っていた。
そして秋道夫妻に迷惑をかけないようにと努力するオレは食事の回数も減らしていた。

栄養を溜めようとしてはチャクラとして消費される。
一向に脂肪が付かない状況に、秋道一族の特異体質は秋道チョウジの肉体を改造することでその状況に対応しようと、異常な成長を始めていた。

特異体質ゆえに常人のよりもはるかに優れていた胃と腸がより強化された。
少ない食事量からより多くのエネルギーを取り込むために、強化された胃は入ってきた食物を瞬時に胃酸で溶かし、同じく強化された腸は液状になった栄養物を欠片も残さず吸収していた。

食事からより多くのエネルギーを取り込めるようになった肉体は早速脂肪に溜めようとして、馬鹿な俺の訓練に即座に枯渇するまで使われていた。

肉体はさらに胃と腸を強化し、オレは増えてゆくエネルギーをより困難な修行によって発散していく。

オレの愚行によって、胃と腸はどんどん強化され続けていった。

いまでは何を、どれだけ食べても消化でききて吸収率99%の、無敵の胃と腸を手に入れてしまった。
フードファイターなんて目じゃねぇぜ。
それに消化吸収率99%のオレは一週間に1度しか排便しない。
排便量も常人の一回程度の量である。

最初のうちオレは自分の肉体が変化していることに気づかなかった。
気づいたのは皮肉なことに一週間しか通わなかったアカデミーの休み時間のことだ。

原作では食べるシーンばかりがあって、排便のシーンがなかったせいで忍者の体ってのは元々こんなもんだと思い込んでいた。 だが俺以外の全員が一定の頻度でトイレに行っていたから、その時オレは、初めて自分の肉体が異常であることに気が付いたのだった。

特異体質によって蓄えられ続けるエネルギーと、間断なく続けられる修行によって培われる精神エネルギー が秋道チョウジの肉体に上忍以上のチャクラ保有量を持たせていた。



いつものように朝食は抜いて修行場に向かう。
重りはベスト型で100kgを、両腕手首に20kgづつ、両足首に30kgづつで完成だ。
これにさらに昨日購入した大型マスクを身につける。うむ。かなり呼吸しずらい。

で、ランニングで修行上に向かう。距離はおよそ2km

マスクをつけてるとたまに波紋ができるんじゃないかとコオオオオっと呼吸してみるが、結局できなかった。ツェペリさーん、横隔膜のツボを突いてくださいなー



幼児期から続けていた筋力トレーニングは、やはり俺の体に負担をかけていた。
人間には超回復という機能がある。それは運動によって破損した筋肉が再生する際により大きく強くなるというものだ。
で、乳幼児のオレは壁登りの修行を毎日していれば、当然超回復によって筋肉が発達する。
寝る前に使われきったエネルギーは傷ついた筋肉を再生する超回復に使用されていたった。

限界近く使い込まれて、超回復を繰り返す。

限界近く使い込まれて、超回復を繰り返す。

幼児期に筋肉が付きすぎると増加する筋肉量によって骨の成長が阻害されるはずだった俺の身長も、オレがただ単に高身長になろうとしてチャクラを集中させて骨を作っていたことによって防がれていた。

グラップラー刃牙にでてくるジャック・ハンマーというキャラを思い出してほしい。
ステロイドユーザーだったジャックが、高密度の鍛錬によってついにステロイドを超えて得た高純度の筋肉。しなやかで弾力がありながらも鋼の如く強固な筋肉。

ジャックがたどり着いた場所にオレは知らず知らず、俺は日に10時間の壁登りの修行と、連日行われる超回復による筋肉の増強と、チャクラコントロールによる強制的な成長でたどり着いていたのだった。



ランニングを続けているといつもより速めに修行場に到着した。
呼吸は大して乱れてないので、そのまま木登りの行を始める。

今日は長く寝た分、エネルギーが溜まっていて気持ち悪いのできつい修行にすることにした。
最初から頭を下に、さらに木に背中を向ける形で横周りで登る。登る速度も速めたのでかなりきつい。

これは相当きついな。
エクソシストー!!!とか心の中で叫んでみる。
里にいる間数回は人前でボケた事もあったが、オレに突っ込んでくれる人は一人もいなかった。



今のオレの肉体の状況を説明しよう。
年齢10歳、身長160cm、体重52kg、体脂肪率3%だ。

最終的には170近辺で身長を止めようと思っている。
暁とか歴代の火影を見れば解るように、忍者にとって大きすぎる体は決して誉められたものではないからだ。
巨体になる必要があれば、それこそ倍化の術もあるしね。

体重と体脂肪率を考えれば全身筋肉の固まりだと思われるかもしれないが、そうではない。
修行内容が瞬発力よりも持久力を優先したものになっているからだ。
なぜ持久力を優先したかというと、瞬発力が必要とされる状況はチャクラの集中や脳内活性を使えばどうにでもなるからだ。

それに持久力を高めることは疲れにくさと疲れからの回復能力が高いということでもある。
一般人でもそれなりのサバイバリティを求められるこの世界では重要なことだ。



木登りを2往復して、印の修行に入る。
昨日はネジの視線が合ったので印の数が少ない低レベルの術がメインだったから、今日は1つの術につき印が10以上の高レベルの術にする。
速度よりも正確さに重点を置いて5分間で20程度の術を終える。
それを1セットにしているまで延々続けてる。

で、昼飯の時間になったところで、オレは今日弁当を忘れたことに気が付いた。
あーなんてこったい・・・天を仰いで片手で目を覆う。

「おーまいがー」

今日始めての発した声は絶対に神に届くことなく、森の中で消えていった。



秋道一族は例外なく大食漢である。
オレも養育費を貰っている身分ではあるがエンゲル係数はそうでもない。
これは自分で考えたかなり安い食事で空腹と食費を浮かせることに成功している。

離れで食うのは夜食のみだが、まず、歪だったり虫食いなどで安くなっている野菜や果物を大量に買う。
野菜の傷んでいる部分を取り除いて洗浄後に、ミキサーにかける。
同じく買ってきた大豆を大量に煮て、これもミキサー投入してで徹底的に微塵にする。

そのペーストを鍋に大量の水溶き片栗粉とともに入れて、蒸す。
すると大豆と野菜のゼリーが出来上がる。当然冷蔵した後に食す。

これがオレの晩御飯。月の25日くらいは食べる日常食だ。
食後は板ガムサイズに切り出した鰹節(木のような硬さである)をくちゃくちゃ噛んで顎の強化とビタミンを補充しながら夜のニュースを眺めて酒を飲んで寝る。

肉が欲しくなると死の森の巨大生物を捕まえて食ったりもする。これは家畜の肉で満腹になる量を買おうとすると予算が吹っ飛んでしまうからだ。
死の森にいる巨大生物達で、一番美味しいのは巨大蛇だった。鶏肉の味ね。
次に美味いのは池にいる肉食魚。
勿論巨大蛇だけあって食いでがあるが、それでも数日で食い終わる。
骨はカルシウムの摂取やシチューの出汁として美味しく頂いている。

初めの頃は撲殺した巨大蛇を抱え餌家路に付く俺に、里人の目がかなり辛かったが、すぐに慣れた。
それに他人から向けられる視線なんて、もう何も感じなくなっていた。



とりあえず演習場をめぐって木の実や茸、魚や小動物をGETして火遁で焼いて頂く。 うむ。まんま野趣溢れる味である。塩とか胡椒があればまた格段に味が良くなるんだが・・・

カプ・・・モニュモニュ・・・

うむ。板垣風に美味しく頂いた。 食材に対する感謝も忘れてはいけない。
ごっつぁんでした。世は満腹じゃ。

で、食事が終わった俺の前には息を切らせた日向ネジが立っている。

「フゥ・・・単なる木登りとはいえチャクラをほとんど使ってしまったよ」

汗を拭いながらなに清々しい顔でいう。
っていうか何してますかこの小僧は。

オレはオレだけに飛んでくる暗部の殺気に胃が痛くなるのだった。

「お前の身体能力とチャクラについても聞きたいことがあったしな」

「・・・帰れコゾー」

今日この日からオレの修行場はオレだけのものではなくなってしまった。



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