【第19話 交渉=説得=脅迫】



今、俺の目の前に鉄格子があり、その向こうの独居房に山中イノがいる。
下忍の時に着ている紫色の服ではなく、オレンジ色の上着にスカート姿である。 本戦の観戦中か、プライベートな時に攫われたんだろう。

イノがココに囚われているのはハッキリ言って俺の所為だ。それはもう責任転嫁できないくらいに俺の所為だ。
だからと言ってそれを告げるつもりは無い。これからハーレム入りさせるという難交渉を行うのだから、わざわざイノにカードを与える必要は無い。

交渉とは交渉する時には既に結末は決まっている。交渉とは始まりだの終わりだのではなく、どれだけ自分に有利な条件を引き出すかというだけのものでしかない。

この条件なら相手にも旨みや利益があると思い込ませて、妥協させる。
そのために事前に相手のカードを知り、無力化し、最高のタイミングで自分のカードを切るのだ。

俺は通路に立ち、イノは牢屋の中にいる。
これは俺とイノの絶対的な立場の差であり、俺にとってのアドバンテージである。
いうなれば俺は生殺与奪の権利を有する絶対者であり、イノは生贄。だがイノには俺が救世主だと思い込ませなくてはならない。

だからこれから教えるのだ。俺が上で山中イノが下であること。

俺が奴隷でお前が主人だって・・・・え?



あぶねーあぶねーあんまりにもストーリーでM的展開が続いたせいで性癖まで変わっちまうところだったぜぃ。
本来俺はSなんです。むしろドSです。
いや、周りがね・・・大蛇丸とか・・大蛇丸とか・・もっとドSなもんでM的展開になってただけでね・・・
ろくに交渉が通じないのは大蛇丸には戦闘能力という絶対的なアドバンテージがあるからだ。 俺と大蛇丸の戦闘能力差はキリバス共和国とアメリカぐらい差がある。実際そこまでの差があるわけじゃないと思うが、必ず勝つという状況でなければ差がどれほど開いても、縮まっても同じことである。

誰だよ大蛇丸を仕込んだ奴は。あんな危険生物を野に放ちやがってよう・・大迷惑なんだよう!
って育てたのは三代目火影か・・・あの爺・・・でもアスマが孫としているからホモではないよな。・・・ってことは天然のオカマか?

まぁいいや、大蛇丸のことはほっといて。
これからはリビドーまっしぐらな展開が待っているわけですよ。グヘヘヘ。

本格小説的展開いっちゃいますよぼくぁ。



「つーわけで君のご主人様になることになった秋道チョウジです。4649(よろしく)」

「はぁ?なにいってんの?」

いかんいかん。脳内で勝手に会話が成立していたせいで主語を飛ばしてしまった。初めからきちんと説明せねば。ねば。
イノに春によく出る頭の可哀想なオジサンを見るような目で見られました。ぐへ(笑)

漫画からの知識だとイノってデレデレだよな。まぁそんなにデレ萌え属性ないからいいけど。
むしろ素直クールの方が好きです。自分、裸エプロンよりも裸ワイシャツ派ですから。

イノは独房内の椅子兼ベッドに腰掛けてこちらを見ている。手錠とかはかけられていない。
まぁイノの実力では直径5cmもある鉄格子を壊すことは勿論、この研究施設から脱出することも出来ないからだ。

「あれ?大蛇丸とか音の忍達から何も聞いてないの?」

「(何このキモイ奴・・顔の右半分が鱗になってる・・・)わけのわからないことを・・・・でも秋道チョウジって聞き覚えがあるわ。
確か・・秋道おじさんの長男でアカデミーを一週間で辞めたって問題児だって」

あ、そういう意味で知ってるのね・・・まぁいいけどさ。

「そうそう、それが俺だよ」

「嘘・・だって・・・その・・太ってないじゃない」

それもそうである。
秋道一族といえば太目がグローバルスタンダードだから。
今の俺の身長は162cm、体重は47kgだからねー。ちなみに体重が40キロ代なのは痩せているのではなく手と足が無いせいね。

「節制してるもんでね。それに秋道家の食事は離乳食以外は食ったことがないから・・・太るほどあの家にはいなかったよ」

そうだよなぁ・・・なんか懐かしいような全然懐かしくも無いような・・・
あの人達は元気だろうか?どうでも良いといえばどうでも良いがやはり少し気になる。
めっきり出演しなくなった一発芸芸人ぐらいには。

「まさかアンタ裏切り者!?」

イノの言葉にムカッと来る。
俺が大蛇丸の研究所にいる=裏切り者。俺が大蛇丸に捕まったこととか下忍が知らないのも無理もないが、 裏切り者といわれるほどあの里には属していないし、自分からこの研究所に来たわけではないのだ。

「待った待った。それものすっごい誤解があるから」

それから俺の生まれてからの境遇を話した。ただし生まれてからすぐの話ではない。
まず親に捨てられて家庭教師付きの一人暮らしだったこととか監視されていたことを話した。

それと自分が下忍ではないということ。卒業試験はおろかアカデミーにも通っていないこと。
だから俺は機密を持ってるわけでもなく、そもそも忍びですらないのだと。

そして里を棄てて旅に出たところで大蛇丸に捕まり、気が付いたら実験動物兼便利な検査道具として扱われていることだ。

ここで一度離れて、飲み物を持ってくる。
実は俺はあまり長時間話すとすぐに喉が乾いて、舌が疲れてくるのだ。ただ単に人との会話に慣れていないだけとも言える。
首から提げた袋の中に水筒と紙コップが二つ入っている。
不便だよなー片手しかないと多くの物が運べないし、何より松葉杖を付いているので手に何かを持つことも出来ない。

床に座り込んで袋を置き、コップの一つに水を入れて、差し出す。もう一つにも同じく水を入れて飲み干す。
毒が入ってないというジェスチャーだ。だが実は少しだけダウン系の薬物が入っている。
解析作業として使われ続けたお陰で、対毒・解毒能力の増している俺には何の効果もないが、初めて飲むイノには効果がある。

このダウン系ドラッグの効果によってイノの心を折って交渉を上手く運ぶつもりだ。

でもイノはコップを持ち上げもしない。うは、無駄足。

まぁ当然か。
忍びが捕まった先で出された飲み物や食べ物にそうホイホイ手を出すわけ無いよなぁ。

「ふぅ・・・大蛇丸に捕まるとどんな目にあうか見せてやるよ」

呪印によって変化した皮膚や、腕の無くなった肩と腹部の縫合痕を見せてやる。
ついでに右目の義眼を外して、瞼の奥の肉を見せてやる。そして不自然に欠けた舌とか。
俺の傷口を見たせいか、イノは真っ青になって震え始めた。

「大蛇丸は君の、山中の秘術が知りたいんだってさ。
だけど君の家を襲って秘術書をごっそり奪ってきたそうだから、君への尋問はその書類の解析が終了してから解析の補完的意味合いで行われるだろうね。
ああ、でも山中イノイチならともかく、未熟な君から聞き出すことなんてたいして無いから・・・やっぱり尋問→拷問→人体実験って流れかなぁ」

忍びの家にある秘術書ってのは大抵暗号処理が施されている。これは秘術書の保管場所が強奪に対して弱いからだ。
反面火影の家にある禁術書とかは大した暗号処理が施されていない。これは逆に火影の家に侵入し、禁術書を強奪するという可能性がそもそも低いからである。
まぁ24時間暗部によって警備されている火影の家に攻め入ったり、気付かれずに侵入するのはほぼ無理なのだから当然といえば当然だが。

ちなみにナルトが禁術書を奪ってこれたのは火影によってナルトを見張っている暗部に、直接行動が禁止されているからだろう。
暗部の中には当然ナルトを憎んだり、危険視する者がいるはずだから、火影から厳命されているはず。
だからナルトに対してよく忍び込めたなとかよく盗めたなと言うのは間違っている・・・と思う。

「・・・わ、わたしも拷問されるの?」

「エグザクトリー! その通りでございます」

ここで誤解して欲しくないのは、この世界では忍び同士の戦いで降伏とか捕虜とかジュネーブ条約とかは存在しないってことだ。
というのも現在の地球では武装解除して拘束すれば無力化できるが、この世界では武装解除して拘束しても無力化できないからだ。
チャクラだけでも脳内活性とかチャクラの集中とか出来るし、そもそも捕まえた相手が実は分身だったり変化によって弱っているように見せて潜入・破壊工作を行うかもしれない。

だから最初から捕虜にはしない。

捕まえた場合は情報聞き出したら殺すのが常だ。
あの平和主義の塊である木の葉の里でさえそうするのだから、この世界ではそれが一般常識って奴なんだろう。
だから捕獲任務でもない限り捕虜は存在しない。

大量の捕虜を収容しても、もし何らかの理由で集団脱走とか反乱とかされた場合の被害は現代の比じゃない。

さらに里同士での捕虜の交換交渉というのも無い。
変化や分身は当然のこと、洗脳なんてものが平気である世界なら捕まえられた捕虜を取り戻すことそれ自体がリスクを孕んでいる。

そんな殺伐とした一般常識の世界だが、秘術や機密情報を持つ忍びは例外的に捕獲されることがある。
しかもこの研究所では捕まったら拷問というか、むしろ拷問するために捕まえられたっぽい人が何人かいる。
まぁ美形の・・・男なんだけどね・・・深夜大蛇丸が彼等の房を訪れた時は、その翌日一杯は彼等をそっとしておくのが暗黙の了解となっている。

「うん。間違いなく。なぜなら大蛇丸が拷問好きだから。情報を取るためとかじゃなくて楽しむためにね。
俺なんか大蛇丸に気絶させられて、目が覚めたときにはこの状態だぜ?道具扱いされながらもボコられて3日間意識ないとか犯されそうになるとかしょっちゅうよ」

ガチガチとイノの歯が音を立てている。怖いんだろうなぁ・・・自慢じゃないが拷問とか人体実験される側の恐怖感って怪談とかお化け屋敷なんかめじゃねぇぜ。

「大蛇丸の拷問と人体実験に何とか耐えられても、今度は男囚人への慰み者・・・って慰み物ってわかる?
あ、でも拷問の段階で棘の付いた奴とか真っ赤に熱した奴を○○○に突っ込まれるから、慰み者は避けられるかー?
となると人体実験を生き抜いても利用価値がなくなるわけだから殺されちゃうな。
でも君は俺と違って正式な忍びだ。他の里の忍びに捕まったらこんな目にあうってのは覚悟の上だよね」

覚悟とかそういう問題じゃないんだがあえてそういってやる。追い詰めれば追い詰めるほど誘導しやすいからだ。

「・・グスグス・・ああああ、なんで?なんでこんなことに・・・貴方は、どうして、生きてられたの?」

「価値を示したからだよ、捕まる前、捕まった後も自分が価値があると。
だから人体実験の後生かされてるし、それに大蛇丸は俺に強制労働させたほうが得だと理解しているからね。
俺はなんとしてでも生き延びることにしている。大蛇丸のような人間は敵が多いから、いつか滅びるその日を待っている。
まぁ君は価値を示さないと待っているのは苦痛の末の死だよ。本当に。マジで」

一息つく。
イノはもう涙と鼻水でグチャグチャで、ブサイクな顔してる。
でも容赦はしない。容赦して何になる。フェミニズムで腹は膨れねぇっての。

「そこで君にビッグチャンスです!今、秋道チョウジのハーレムに入りますと、自由こそ無くなりますが拷問と人体実験が無くなります」

「ハーレムって・・・」

「俺はハーレム建設と引き換えに大蛇丸に新たな人体実験への参加を命じられている。だから君のハーレム入りが決定されています。 つまり俺専属の奴隷になることで人体実験とか拷問とか慰み者にならずに済むんだ。パードゥン?」

この年頃の女の子にハーレム入りに納得しろっていうのも無理な話ではあるが・・・

「イヤよ!私はサスケ君が好きなんだから」

そう言えばそんな設定だったね・・・・

「あー好きな人いるんだ。それじゃぁ無理だよね。特にその年齢じゃ自分の意思で奴隷になるなんて選べないよね。
うんうん。ところで現状把握させる為にも、君みたいに捕まった人間がどうなるか特等席で見せると大蛇丸から言われている。
これから拷問+人体実験が行われる。
っていうかその囚人は尋問の段階で全部聞き出したから、殆ど新術開発のための解剖らしいよ」

「人体実験・・・」

「実は俺も意識を取り戻してからは拷問とか拷問系の人体実験とかは受けてない。
だから君と俺に反抗心を抱かせないためにも飛び切り酷い実験を行うだろうよ。
オレ達に見せ付けるために人1人殺すんだよ。それもたっぷり痛みと恐怖を味あわせてね。
酷いよね、酷い。・・・うん、酷いと思うよ。でも酷いと思ったり嫌悪したら大蛇丸は人体実験を止めると思う?むしろ喜んでやるよ」

俺は松葉杖にすがるように立ち上がる。

「そして俺の申し出を拒否した君にもその哀れな人と同じ事が行われる。なぜならもう一人日向ヒナタが捕まっているからだ」

「ヒナタも捕まってるの!?」

「そうだよ。彼女も捕まっていて俺のハーレムに入る予定。ハーレムを作れる理由は大蛇丸にとってある程度の見返りを許される位は俺の価値が大きいことと、ハーレムそのものを俺を大蛇丸の元に繋ぎ止めるための枷にする気だから。
君達を殺されたくなかったら反抗せず、協力し続けろってね」

俺は牢の前から離れる。脅しには更なるインパクトが必要だからだ。

「で、よく考えてみてよ。山中イノ。君は自分と白眼という血継限界を持つヒナタのどちらが価値があるか。
言わなくても解るよね。
拒否した場合残酷だけど・・・君は日向ヒナタの心を折るために彼女の目の前で解体されることになる」

「そんな・・・」

「死を選ぶという方法もある。
汚される事も苦痛を味わうことも利用されることも無く死ねるということに惹かれるだろう。
でもね、ここの連中なら君の死体を操ることなんて容易いんだ。
だから君の死体はやはり日向ヒナタを服従させられるために解剖される。
泣き叫ぶ山中イノという姿を見せるためにね。

だから君が死を選んで満足しても、結果は同じなんだよ」

廊下を歩いてその端にあるドアの前に立つ。この向こうには俺の奥の手が待っている。
気配を隠して俺の様子を伺っている誰かがいる。

「さて話しをまとめようか。
まず、君は里を裏切りたくない。だから大蛇丸には情報は渡さない。
でも山中の秘術書は既に大蛇丸の手に入っているし、君が知っている秘術なんて書類から解析できる程度のもの。

つまり情報を渡して身の安全を図るという裏切り行為がが嫌だという以前に、君にはもう大して価値は無い。

次に好きな人がいる。だから俺のハーレムには入らない。
そう突っぱねるのはいいよ。でも拒否したら君は拷問を受ける。既に知っている情報を確認するためだけに。
そして解剖される。日向ヒナタの心を折る為だけに。

で、ここで自殺する。
君が持っている情報は結局解き明かされるから意味は無い。まぁ裏切らなかったという満足感は得られるね。
で、君の遺体は操られて日向ヒナタの心を折るために使われる。

君が自分の意志を貫く道にあるのは絶望だけだ。

俺のハーレムに入れ、山中イノ。そして尋問の段階で知ってる秘術は全て吐いちまえ。
サスケが好きなら好きでい続ければ良い。
君には君を大蛇丸から助けてくれると信じることができる人がいるだろう?サスケ、火影、シカマル、父親である山中イノイチという連中を。
希望ってのはそれだ。待っていれば助けが来るかもしれない。
ならば耐え抜け。
貞操観念なんて棄てて、今は生き延びるんだ。
それに大蛇丸はサスケを勧誘するつもりだからここで会えるかもしれないぞ。

よく考えろ。

これからお前を係員が連れて行く。お前にする予定の拷問がどんなものか見せるために。
その拷問を見ながら、拒否したら自分がどう拷問されるかしっかりと理解しろ。

その上で自分にとって何が最善か選ぶんだ」

俺が扉をノックする。すると扉が開かれ、何人かの忍びが入ってくる。
そいつらは血の付いた手術着を来た忍び達だ。皆手錠や拘束具を持っている。当然血で汚れたものだ。
中には肉片つきの毛髪が付いたものまである。

そいつらが鉄格子をあけて、牢内に入っただけで山中イノは気絶した。
失禁して。




第18話 戻る 第20話